Saturday, December 13, 2008

報告「アクション・リサーチ交流会 (200811.30開催)」




はじめに

当初の計画からすると、今回はARS@MUのメンバーのARへの取り組や、支援の様子をレポートするはずでしたが、今回と次回の2回に渡り、11月29日に松山大学で行われた「アクション・リサーチ交流会」の様子と、そこで私が行った基調講演の概要をお知らせし、その後、計画に戻り、ARS@MUでのARや支援の具体例を紹介し、また、他のARのレポートと私の解説を紹介することにしたいと思います。さっそく、交流会の様子から。

参加者の人数と全体的な感想

 ARS@MUのメンバーが指導主事を含めて27名、他の参加者が県内から22名、県外からは横浜の会から6名のほかに、高知、広島、京都、三重、埼玉から、総勢80名の参加者を得ました。主催者の予想を超えた人数でした。また、「支援者の会」からも、山形、福島、石川から、ARへの取り組みや受講者の感想、今後の抱負などを書いた挨拶をメールで寄せていただきました。会場で紹介させていただきましたが、参加者には大きなインパクトがあったようです。全体的な感想としては、次のようなものがあります。

 *全国に真剣に授業改善に取り組んでいらっしゃる先生がこんなに多いことを知ったことが大きな発見でした。
 *まずは、こんなにも多くのARの実践者の先生がいらっしゃることに感激しました。一人では継続が難しいと感じているので、ネットワークを作り、自分の地域でも「ARの会」を作りたいです。 
 *遠くから、多くの先生がお見えになっていて、感激しました。
 *今回の研修を企画・運営していただきありがとうございました。とても勉強になりました。今後、このような会があれば、是非また、参加したいと思います。
 *内容が大変よく、来てよかったと思いました。現場の忙しさに流されて、滞っていたアンケート調査を再開しようというエネルギーをいただけたことが、今回参加させていただいた一番の収穫でした。

当日の流れに沿ってー1(開会から基調講演まで)

1)開会の挨拶:鈴鹿愛媛県指導主事から、ARS@MUと横浜の会の交流を目的にしたインフォーマルな会なので、相互の交流を深めて欲しいと会の趣旨が説明されました。
2) 歓迎の言葉:金森先生から、歓迎の言葉と同時に、松山大学では、来年度の大学院の行事として、小学校英語活動の研究とARの研究を毎月1回開催する予算が確保できたので、この会を継続、発展させていきたいという決意が語られました。
3) 「AR支援ネットワーク」からの3通のメールの紹介。
4) 基調講演:日本の英語教育の低迷は、国の政策、教員養成、現場の実践が場当たり的で筋が通っていない。その対極にあるのがフィンランドで、そこで行われているresearch-based teacher education やARへの取り組みから学ぶことが沢山あるのではないかという趣旨の話をしました。詳細は次回の通信で報告します。

当日の流れに沿ってー2(研究発表)




2会場に分かれて、横浜の会から4名、ARS@MUから2名の発表がありました。タイトルは、以前にお知らせした通りです。いずれの発表も、参会者には大きなインパクトを与えたようで、次のような感想があります。  

 *一つの会場でやって欲しかった。聞きたい発表ばかりだったから。
 *各先生の現場に応じた取り組みが紹介され、自分の課題や悩みと重なり、とても親近感をもって発表を聞くことができました。ありがとうございました。
 *すばらしい内容の充実した発表ばかりで、半日ではなく、少なくともまる一日、できれば2日かけてやって欲しかった。
 *最近の自分の授業を振り返る機会になった。自分と向き合って、もっと改善していかなければならないと思いました。
 *どのクラスにも改革のチャンスはある。教師の取り組みで違いが出てくることを今日の発表を聞いて再認識できた。
 *本当の振り返りや反省は、目標を決め、仮説を設定することでやっと本物になることを痛感した。自分の取り組みの甘さを嫌というほど感じさせられた。
など、発表に感動した人が多くいました。
 この発表のうち、ARS@MUのメンバーのARを選び、経過を時系列で紹介し、折々に私がどのようなアドバイスを与えたかを、「通信14 号」でお知らせします。 













当日の流れに沿ってー3(講演とミニ・シンポ)




1) 長崎先生講演:高知の悉皆研修で5年間に渡りARを実施してきた成果を、教員の指導力のどの部分にARの効果が現れたという視点から、アンケート調査の分析結果を踏まえて解説されました。5年間の実践の重みを感じました。
2) 高橋先生講演:教員養成の歴史をみるとteacher trainingから、教師の主体性を認めたteacher developmentに変わりつつあり、そのことは新技術をただ溜め込んでゆくassimilation ではなく、自己変革をともなうaccommodationを意図しなければならない。このことは、免許状更新の講座でも必要という提案は説得力がありました。

3) ミニ・シンポ:金森先生の司会で、参加者の質問に私が答える形で進行しました。「受験英語とAR」、「ARの仮説はなぜ複数あるのか?」の2点に話しが集中しましたが、時間不足のため、十分ではありませんでした。この2点については次回の通信で説明します。



 この部分の感想としては、

*尊敬する先生方がいつも変わらぬ熱い想いをもって活動されている姿を見ると、大変力になりました。
*生の大学の先生の話しが聞けたこと、普段は考えないような、でもとても大切な話を教えていただいて、自分の知識が広がりました。
*普段の取り組の中での疑問に解答が見つかり、パズルが埋まっていくようでした。ありがとうございました。
*フィンランド教育やresearch-mindedであることの重要性、また、アクション・リサーチの理論や調査方法について理解が深まりました。
*国の文部行政が現状を見直し、一本筋を通すことができないなら、せめて自分が関る生徒には、将来を見据えた教育をしたいと思いました。

総合的な評価と来年度のこと

 この交流会は、もともとは、横浜の会のメンバーを松山大学に招き、発表を聞いて、愛媛のアクション・リサーチのレベル・アップを意図して計画したものです。ところが、「それだったら愛媛県の教員一般にも開放しようか」「愛媛県以外の人も参加できるようにしようか」「だったら、支援者の会にも知らせようか」というように、次第に規模が広がったものです。しかし、対象者の規模は広がっても目的は変わらず、参会者たちの交流によって、ARの可能性を多くのひとに知って欲しいというものでした。この点に関しては、当日の参会者の様子、発言内容、感想、また、懇親会での会話などを総合すると、予期した以上の成果を挙げたのではないかと思います。愛媛県の教員の中には、「来月からARS@MUに参加させて欲しい」という人も出てきました。

 会の成功に気を強くしたからというわけではありませんが、私としては、ARに興味を持っている人たちが年に一度集まり、情報を交換するばかりでなく、互いにエールを交換するハレの場(=祭り)を持つことは意味があると思います。感想からも読み取れるように、現場は決してARにfriendly ではありません。そんななかで、ARをする、しないは別にして、教師としての誇りとresearch mind を持ち続けることは容易なことではなく、とても勇気がいるし、また、周囲の励ましが必要です。その一助として祭りの場を用意し、交流を深める意味は大いにあると私は思います。

 これは、まだ、私の個人的な意見ですが、関係者と相談して実現に努めたいと思っています。皆さんのお考えはいかがでしょうか。今年の反省の上に立って、さらに充実した会にしたいと考えていますので、興味のある方は参加を検討ください。事前の準備をしっかりとして、参会者のニーズにそうようにしたいと願っています。
 それでは、このメールでは交流会の概要をお知らせしました。次回の通信は、新年のご挨拶と一緒になりますが、交流会で私が行った基調講演の内容を紹介し、それに関して参加者からでた2つの質問、すなわち、「ARではなぜ仮説が複数なのか」「受験英語は駄目なのか」の2点について私見を述べたいと思います。乞うご期待。

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「AR支援ネットワーク通信(12)」(松山大学 佐野正之)からの引用

Saturday, December 6, 2008

アクション・リサーチ交流会2008 in 松山



2008.11.30(土)、初めてのアクション・リサーチ交流会を開催しました。当日は、各地から、80名を超える熱心な先生方の参加があり、熱気ある交流会となりました。交流会のレポートは、後日掲載します。

Tuesday, November 4, 2008

私のアクションリサーチ File #2-2 山田 憲昭先生(高知西高校)



 前編において、私とアクション・リサーチ(以降AR)の出会いについて、個人的な思いを含めたレポートを書いた。この後編では、昨年度(2007年度)高知西高校で実施したAR事例を具体的に報告したい。
まず、私がAR対象として選んだのは、高知西高校普通科・2年生(39名)のクラスのライティング(2単位)の授業である。4月当初のスタディ・サポート及び6月の中間考査によると、そのクラスの英語力クラス平均値は同じ学年の中で最も低いという結果であった。また、家庭学習の時間が少なく、平日で10分程度であった。さらに、1年次からの成績不振者5~6名存在し、授業に対する好感度も低く、「英語嫌い」が目立っていた。一方、4~6月の授業観察では、教員の話を静かに聴き、ノートも一応取る、いわゆる「まじめに授業を受ける生徒集団」という一面もあった。

 このような背景を踏まえて、このクラスの生徒たちの英語力の向上のために、以下のようなリサーチ・クエスチョン及び仮説および実施計画を立て、7月以降には授業実践を開始した。

リサーチ・クエスチョン 英語に対する苦手意識が強いクラスで、生徒が自信を持って授業中の活動に参加し、「英語がわかる・できる・楽しい」という実感が持て、基礎的な英語力を定着させるには、どのような指導が効果的であろうか?

仮説1―授業開始後すぐに、簡単な英語ゲームを実施することで、英語学習の雰囲気を向上させることができるだろう。

仮説2―授業中に行う教科書中の課題Task1・2・3をハンドアウト化して、取り組みやすくすることで、生徒の授業中の活動が活性化するだろう。

仮説3―月1回テーマを設定しての英作文課題「月一課題」を発展・改良し、模試や入試など教科書以外のライティング課題を導入することで、基本的な英語力の大切さを理解させ、家庭学習を活性化させることができるだろう。

具体的実践を通じて、まずわかったことは、仮説1の英語ゲームが授業にメリハリを作り、多くの生徒に受け入れられる活動であるということであった。しかし同時に、授業が予定通りに進まないという弊害も生じた。そこで考えたのは、仮説2のハンドアウトを改良し、生徒の授業中の英文筆写時間を短縮することができる形式(穴埋め・並び替え)に変更するということであった。時間短縮の結果生じる「浮いた時間」が英語ゲームのための時間(約5~7分)ということである。英語ゲームの結果は、平常の成績に加味することとした。ゲーム内容は、教師が選んだ教科書の既習語1~2語を、1分程度の時間内に、簡単な英語を使ってペアの一方が説明し、もう一方はその説明を聞いて語を言い当てるというものであった。仮説3については、残念ながら時間の都合で十分に取り組めなかった。

 この間の生徒の変容には、指導者の私には大きく思えた。4月当初は、緊張感はあるものの、活動的・協力的でなく、英語学習に自信がない様子の生徒が目立っていた。しかし、9月~11月に仮説1・2による「英語ゲームの導入」と「ハンドアウトの改良」を実施することで、生徒間に次第に打ち解けた雰囲気が生まれた。調査はしていないが、ペアで英語ゲームを行うことがそういう雰囲気が促進した可能性もあると思われる。また、11月に実施したアンケート調査では「英語学習の楽しさ感・好感度」の上昇が見られ、12月に実施した後期中間考査では、6月に55.1点であったクラス平均点が59.9点にまで向上した。徐々に生徒に「授業を楽しむ姿勢」、「授業に参加する自信」のようなものが芽生えてきたように感じた。

 実は、4月当初、対象クラスが2年生7クラス中最も英語力が低いクラスだとわかり、私は少し不安を抱いていた。しかし、6月の中間考査後、アンケート調査を実施し、「英語授業に好意的」「成績を何とかしたい」と考えている生徒が3分の1程度存在しているという事実を知り、「この3分の1の生徒の力を借りて、授業を改善し、彼らの英語力をプラス方向へ向かわせることができるのではないか」と徐々に思うようになった。不安を押し殺しながら実践を継続し、ARを開始して1ヶ月を過ぎた10月頃から生徒が積極的に授業に参加し始めていることに気付いた。生徒の変容が目に見えてわかるようになり、嬉しく感じる自分がいた。教員としての喜びが、生徒の成長とともにあることを改めて認識した。

さて、最後に、今回のARで実施した種々のアンケート調査で見られた生徒の学習動機と学力向上に関わる重要な知見を報告したい。

アンケート調査によると、仮説1・2を実施することで、授業を「好きである」「まあまあ好きである」と回答した生徒が37.1%(7月)から65.8%(11月)にまで向上した。肯定的に回答した生徒の多くは、その理由として「わかりやすい」「楽しい」「おもしろい」「雰囲気がいい」「勉強になる」「ミステリー・ワードが好き」等を挙げた。さらに、11月時点で81.5%の生徒が、英語ゲームは英語力向上に「かなり役立つと思う」「まあまあ役立つと思う」と回答した。生徒たちは、その理由として「説明の仕方を学べる」「表現力が向上する」「単語を覚えられる」等、自分自身が役立ったと実感できた様々な理由を記述式で回答したが、それらは私の想定をはるかに超える内容であった。

これらから言えるのは、単にfun activityとしてゲーム活動を授業に取り入れた経緯はあったけれども、実は
それらのゲーム活動が「英語力の向上を生徒が実感できるような活動」であったことが生徒の学習動機を高めた可能性が大きい、ということである。授業と何の脈絡も発展性も、継続性もないゲーム活動であったならば、果たして生徒のやる気はこのように変容したであろうか。残念ながら、今回のARではこの1種類のゲーム活動しか行わなかったので、この疑問に正確に答えるデータはない。しかし、英語学習の雰囲気を変えることができればそれでいいと考えていた私には、生徒が予想外以上に良い方向に反応したことは本当に大きな発見・知見であった。

英語指導の現場では、ALTとのT・T授業等を中心に、ゲーム活動を頻繁に授業に取り入れているケースが見られるが、そういう先生方には是非「授業の雰囲気作り」や「生徒の注目を即効的に集める」という効果からもう一歩踏み込んで「生徒に英語力が向上しているという実感を与える」という効果を考えたゲーム活動作りにチャレンジされてはどうかと思う。

☆報告書へのリンク (現在準備中)

☆連絡先 (現所属)高知県教育委員会事務局高等学校課
     TEL:088-821-4850
     E-mail:noriaki_yamada@kt5.kochinet.ed.jp

Tuesday, October 14, 2008

ご案内 「アクション・リサーチ交流会2008」 in 松山



アクション・リサーチを実践している仲間が集って、交流を深めます。アクション・リサ-チの意義や醍醐味ばかりでなく、苦労話なども、楽しく語り合いましょう。授業に悩みを抱えている先生、プロとしての力量を磨きたいと思っている先生、多くの人と授業実践を交流したいと思っている先生。気の合った仲間と一緒に参加してみませんか。それでは、松山でお会いしましょう。



日 時: 2008年11月29日(土)13:00~17:00

会 場: 松山大学学生会館カルフール会議室1.2
       JR松山駅から、路面電車循環線で約15分。清水町下車。
       徒歩2分。大学西門から入りすぐ右手。

主 催: アクション・リサーチ・ゼミ@松山大学(ARS@MU)
共 催: アクション・リサーチの会@yokohama(ARCY)アクション・リサーチ支援ネットワーク

内 容:                       

13:00 開 会        愛媛県教育委員会 鈴鹿基廣
13:05 歓迎のことば    松山大学 金森 強

13:15-13:45 基調講演「なぜアクション・リサーチなのか」
                 松山大学 佐野正之

13:45-14:00 発表者紹介(自己紹介と発表内容の概要)

14:00-14:30 AR実践研究発表1 (進行:教室A=高橋 教室B=長崎)

 教室A 「単語集を利用した意図的語彙学習に関するアクション・リサーチ」
                神奈川県立大和西高等学校  小金丸 倫
 教室B 「語彙指導に重点を置いたリーディング能力を伸ばすアクションリサーチ」
                神奈川県立川和高等学校 栗原 清

14:30-15:00 AR実践研究発表2

 教室A 「テレビ会議を通してスピーキングの力を伸ばすアクション・リサーチ」
                藤沢市教育委員会 東 麻子
 教室B 「パラグラフ・ライティングの力を伸ばすためのアクション・リサーチ」
                神奈川県立大和西高等学校 村越 亮治

  (休憩)

15:10-15:40  AR実践研究発表3

 教室A 「基礎・基本の定着で英語を学ぶ楽しさを実感させるAR」
               西条市立西条南中学校 武田志津
 教室B 「教科書の指導とからめたタスク活動によって英語の苦手意識の克服を目指すAR」
               愛媛県立松山工業高校 宮内朋子

15:40-16:05 報 告「アクション・リサーチは英語教員のどこに効いたか」
                高知工科大学 長崎政浩

16:05-16:30 講 演「これからの教師教育と教員研修」
                神奈川大学  高橋一幸

16:30-16:55 ミニ・シンポジウム「参加者の交流とリフレクション」(進行:金森)

    気取らない座談会形式で、佐野先生のコメントを交えながら、発表者の皆さんと
    今日1日の交流会を振り返ります。

16:55    閉 会       愛媛県教育委員会 池田哲也

  ☆懇親会  17:30~ ホテル・サンルート松山(JR松山駅から徒歩2分)
会費 5,000円

参加申込: 申込みの必要はありません。ARに興味のある方はどなたでも歓迎です。参加費は無料です。


☆開催案内ダウンロードはこちらから(pdf)。

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「英語教員のためのアクション・リサーチ支援ネットワーク 」
【主宰】佐野正之(松山大学)

☆お問い合わせ【事務局】長崎政浩(高知工科大学)
masahiro@nagasaki21.com または 0887-57-2105まで

Sunday, September 21, 2008

第4回「授業改善への具体的指針」 高橋一幸(神奈川大学)

 授業改善には、いろいろな方法があるが、教師一人が独力でできることは限られている。より良い授業を目指して、ともに励まし合い切磋琢磨する仲間を見つけることが大切である。「学ぶことは真似ることから始まる」とよく言われる。優れた授業を数多く見て学ぶことは、特に経験の少ない若い先生方には重要である。また、勇気を出して、自分の授業や実践を公開し、他の人々から批評や助言を得ることも大切だ。自己の経験からだけでは視野が広がらないので、英語教育に関する様々な文献を読み、自分なりに消化して授業に取り入れることも忘れてはならない。

 ただ、ここで留意すべきことは、いかに本を読んだり、すぐれた授業実践を見たからと言って、そこに示されているものを自分自身の考えもなく、ただ真似るだけではうまく行く保証はない。対象とする生徒が異なり、指導する教師自身も違うのであるから、うまく行かなくてむしろ当然だと言えよう。「自分の育てたい理想の生徒のイメージ像」と「生徒達の現状(現在地点)」とのギャップの中から、授業改善の目標を一人ひとりの教師が自ら見つけ出し、それを克服するための具体的方法(仮説)を考えて、それを実践しながら、その効果を検証し、もし、うまく行かなかったら、仮説を修正して粘り強く取り組むことが必要である。このような手順をきちんと踏んで授業改善を進める方法が「アクション・リサーチ」である。リサーチと言っても、実験群と統制群に分けて、異なる指導法を実施し、その結果を有意差で数量的に検証するような、現場教員には技術的にも難しく、指導モラル上も実施困難なものでなく、目標意識を持って授業を行いながら、ピンポイントで具体的にその改善を図る、現場教師にすすめたい方法である。

Wednesday, September 3, 2008

第3回 「中・高英語授業セルフ・チェック」髙橋 一幸(神奈川大学)

あなたの授業にこのような傾向は見られないだろうか? 自己点検から始めよう。自分の授業にいくらかでも次の授業のような傾向が見られる場合、また、幸いに自分の授業にはまったく当てはまらない場合でも、以下の授業は何が問題なのか、まずは読者ご自身で考えてみていただきたい。(筆者自身の分析は、本稿末に掲載しておくので、後ほどご確認いただきたい。)

[最近よく観る中学校の授業] 
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教師の与えるゲーム的な言語活動に、生徒たちは楽しそうに元気に参加している。教室は一見活気に満ちている。しかし、生徒に近づき、その発話に耳を傾けてみると、英語のリズムや発音になっていない。英語自体にも誤りが多く、通じない文も多々見られる。

[昔ながらの高等学校の授業]
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教科書の内容理解(表面的な訳読)と教師の文法説明主体の旧態依然とした授業である。ごく少数の指名された生徒は立ってテキストを音読するが、発音も平板なカタカナ読みで、意味の区切りも意識できていないようである。


 いかがであろうか? ここで少し立ち止まって、考えてみよう。
英語教師として、
・「私の理想とする英語授業とは?」
・「私の考える英語学力とは?」
・「生徒たちに育成したい態度とは?」

<中・高英語授業セルフ・チェック―筆者の分析>

[最近よく観る中学校の授業]
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 活動に参加したことのrewardがなく、生徒に何ら変容が見られない。時間数不足もあろうが、生徒たちの興味を引く派手立つ活動に教師が目を奪われ、表現能力の基礎を作るドリルや音読・暗唱などの地道な練習活動(言語活動へのレディネス作り)が指導過程に欠落している。授業は遊びではない。楽しいだけでは授業にあらず。また、内容的もやりがいがあり、力がついているということを実感できる活動でないと、表面的楽しさだけでは生徒の興味・関心も長くは維持できないだろう。
[昔ながらの高等学校の授業]
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 授業に具体的到達目標が見えない。生徒は怪しげな日本語訳はしているが本当に内容を理解しているかも極めて疑わしい。教師の延々たる説明に興味を示して耳を傾け理解できている生徒は少なそうだが、仮に理解できたとしても実践的な表現力や運用力には結びつくはずもない。生徒の表現能力や運用能力は、「表現する場、運用する場自体がまったく与えられていない」ので不明だが、授業でまったく育っていないことは断言できる。生徒は教わっていないこと、訓練していないことはできないものだから。生徒の学力は授業を映す鏡である。

Tuesday, July 8, 2008

第2回 「授業とは、生徒の中に「質的変容」を引き起こすこと」 髙橋 一幸(神奈川大学)

教師の指導と生徒の学習や活動を通して、生徒の中に「質的変容」を引き起こしえたか否か。これが筆者の考える授業成立の要件である。質的変容には、これまで言えなかったことが的確に表現できるようになったなどの「技能」(skill) の変容や、言語や題材内容などについて知らなかったことを知ったという「知識」(knowledge) の変容がある。さらに、技能や知識の変容を通して生じる究極の変容は、生徒たちの日常のものの考え方や感じ方、人との接し方、行動様式などに変化を及ぼす「態度」(attitude) の変容である。ここまで来れば、それはまさに英語「教育」と呼ぶに値しよう。

長期的・短期的視点から、授業を通してどのような変容を生徒に引き起こしたいのか? 看板倒れではなく目標を実現するためには、抽象的な目標を教師・生徒の双方にとって評価可能な具体的活動として設定すること。これが、授業を設計する基盤となる。

指導の鉄則は、レディネスを作ること。

実際の指導では、単位授業にせよ、単元や年間指導計画にせよ、個々の指導過程や活動、1回1回の授業を相互に関連付け、具体的目標(goal)に向かってスモール・ステップを踏んで、無理なく、すべての生徒たちを導く道筋(route)を考えなくてはならない。例えば、1, 2, 3, 4の順序は2, 4, 1, 3ではダメで、1, 2, 3, 4であって初めて効果が上がるのである。指導過程(procedure)や指導計画(syllabus)に、このような説明可能で必然性ある順序が構築されているかどうかを十分に吟味することが授業を設計する上で不可欠なこと、「点として存在する活動や授業を線で結ぶ」ことが肝要である。

Tuesday, July 1, 2008

第1回「理想と現実と諦め」  髙橋 一幸(神奈川大学) 



 生徒たちが目を輝かせ、大きな声で英語を発声し、生き生きと伝達表現活動や自己表現活動に参加する。そのような授業を実現したい。教師であればだれもが願うことである。しかし、その意に反して指導がカラ回りして教師のひとり芝居となって、シラけた沈黙が広がり、まったく無関係な雑談や喧騒のうちに授業終了のチャイムを聞く、といったこともある。そして、心ある教師は自信を失ったり、自己嫌悪に陥ったりするのだが、これは教師として正常な証拠。こういうときに、「こんなできの悪い生徒を教えられるか!」と、授業が成立しない責任のすべてを生徒に転嫁したり、日々くり返される現実への諦めから、問題意識すら麻痺し何の改善意欲も生じなくなれば、教師生命は終わりである。

授業は生徒と教師の双方の努力によって創りあげるもの。生徒が担うべき責任も多いことは事実だが、一人ひとりの生徒が自ら学ぼうとする意欲や態度を育てることが教師本来の仕事であることを考えるなら、プロとしてより大きな責を負うべきことは当然である。「生徒には教師を選ぶ権利はない」のだから。自分の授業を内省(reflect)し、日々その改善を図ることが教師に求められる所以である。「“英語が使える日本人”育成のための戦略構想・行動計画」のもとに5カ年計画で実施された全英語教員対象の「悉皆研修」、また、進行中の「教育改革」の中では不適格教員に対する再研修や現場からの配置換え、教員免許の10年毎の更新制などが現在検討されているが、児童・生徒のためにより良い授業を求めて自分の授業を工夫・改善することは、専門職として教師自らが何を置いてでも率先して、まず取り組むべき課題である。

Monday, June 30, 2008

サポート・メール配信開始

7月1日、「AR支援ネットワーク通信(1)」の配信を開始しました。第1号のタイトルは、「授業とリサーチ」(松山大学 佐野正之)です。このメールを読むためには、メールアドレスを登録していただく必要があります。詳しくは、本ページの右コラムをご参照ください。

【お知らせ】
☆「AR支援ネットワーク通信」は、毎月1日、15日に配信予定です。
☆「AR支援ネットワーク通信」へのメールの返信はできない設定になっています。リサーチについての質問や疑問点がある場合は、事務局の長崎までメールまたは電話でお知らせください。それに回答をいたします。

Friday, June 27, 2008

私のアクションリサーチ File #2-1 山田 憲昭先生(高知西高校)



最近よく「英語教員の幸せとは何だろう?」と自問する。英語教員ならば誰でも一度は私のように自問したことがあるのではないだろうか。この問いへの答えはそれぞれの教員で違うのかもしれないが、今の私は「生徒がいて、毎日授業ができること。」という答えにたどり着く。そして、これはアクションリサーチが私に教えてくれた最も大切なことの一つでもある。

私は、1999年~2007年の9年間を、自らの英語教員としての人生の覚醒期であると位置付けている。人生の中で非常に重要な意味を持つ期間であったと思っている。この9年以前の生活とこの9年間とを比べると、ちょっとした変化がある。それは、人との出会いをきっかけとした英語教員としての「覚醒・自覚」だと思っている。

在籍した高知西高校において担当した全ての授業は勿論であるが、全英連高知大会の公開授業研究とその追研究、高知西高校におけるSELHi研究開発、高知県英語ディベート大会に関わる指導法研究、等様々な課題やテーマを提供してくれた生徒諸君、共に課題解決に向けて汗を流せた教員仲間がいなければ、気付かなかっただろう。そして、アクションリサーチという「自らの手で自らの授業を改善していくという手法」に出会わなければ、いつまでも根拠なしに生徒に責任を擦りつける教員の一人であったかもしれない。

この9年間の私の「授業改善」を支えてくれたアクションリサーチに感謝している。そして、私たち高知県の中高英語教員に「アクションリサーチ」という共通言語を定着させてくれた5年間の高知県英語教員研修に感謝している。(前編おわり)

☆報告書へのリンク (現在準備中)

☆連絡先 (現所属)高知県教育委員会事務局高等学校課
     TEL:088-821-4850
     E-mail:noriaki_yamada@kt5.kochinet.ed.jp

Tuesday, June 24, 2008

私のアクションリサーチ File #1 森 隆彦先生(高知追手前高校)



 私は英語教員指導力向上研修初年度の受講者でした。受講前、アクション・サーチ(AR)がどのようなものか全然知りませんでしたが、関連書籍を読んだり、研究実践する中で、自分の授業改善に大いに役立ちました。

 ARの研究は「速読速解力のための音読」を中心に行いました。自分の報告書を読み返してみると、やっていることは一部分的だったと思いますが、系統だったARの取組に、「ようやったなあ」と今更ながら感激しています。

 計画の実践の中では、シャドーイングに重点をおいて取り組んだのですが、これはその夏の集中研修で受けた、「KHシステムの同時通訳練習法」の影響が大きかったです。今まで自分では経験したことのない斬新なシャドーイングという練習法にはまってしまい、秋からのReadingの授業に早速取り入れました。

 最初は「シャドーイングなんてできっこない」と生徒からは大ブーイングでしたが、CDを生徒全員に持たせ、家庭学習用に記録用紙をつくり、シャドーイングテストもすることにして粘りました。

 3ヶ月ほどかかりましたが、生徒たちは激変しました。シャドーイングは皆完璧になり、特に英語が苦手だった男子生徒の上達ぶりには感動しました。シャドーイングの効果なのか音読を嫌がらなくなり、授業に活気がでるようになりました。

 また、「以前より英文を読むスピードが上がったような気がする」「リスニングも聞き取りが以前より楽になった」などの声があがるなど、自分自身の変化を感じる生徒が多かったと思います。

 授業が変われば、生徒が変わる。まさしくアクション・リサーチはそのことをはっきり教えてくれた私の先生でした。

☆報告書へのリンク 速読速解力を向上させるための指導の工夫

☆連絡先 (現所属)高知県教育委員会事務局高等学校課
     TEL:088-821-4850
     E-mail:takahiko_mori@ken2.pref.kochi.lg.jp

(写真は、ポスターセッションで発表を聞く森隆彦先生:中央)

Monday, June 23, 2008

第1回メール配信予定

第1回目のメール配信は7月1日を予定しています。今しばらくお待ちください。

Monday, June 16, 2008

アクション・リサーチのすすめ:指導主事の皆さんへ

松山大学言語コミュニケーション研究科教授 佐野正之



あじさいの花が美しい季節になりました。ご多忙な毎日をお過ごしのことと思います。

 さて、私は過去5年間、各地の指導主事と協力しながら、アクション・リサーチを中核にした悉皆研修を立案し、実施して参りました。最近、その成果を検証した結果、この研修の進め方は、講演で情報や技能の伝達をねらいとした研修よりも、教師の授業改善に取り組む意欲を高める上で効果があると確信するに至りました。詳細は事務局のホームページにある「教員研修とアクション・リサーチ」という拙論を参照ください。アクション・リサーチに取り組んだ40数名の指導主事や教員との覆面対談のまとめが報告してあります。そこで、ここで得た結論をもとに、アクション・リサーチの発想や手法を、皆さんの今後の研修計画の参考にしていただければと幸いと考え、メールによる指導主事への支援を計画した次第です。

 というのも、どこの研修センターでも予算が削減されて外部講師への依頼が難しくなっていると聞きます。しかし、年次研修は継続され、じきに免許状更新の研修も計画しなければなりません。さらに、小学校英語活動への早急な対応も求められています。このような場合に、もし、指導主事がアクション・リサーチを中心に研修を計画し実施することができれば、外部講師に依存する以上の効果をあげる可能性があるのです。すでに、悉皆研修の中で、これを証明したケースがあります。細部は上記の拙論をご覧ください。私は、志を一つにする英語教育の専門家たちと協力し、こうした情報をメールでお知らせし、また、皆さんからの質問に答えたり、相談を受けることによって、全国の教員研修を一層充実したものにしたいと願っております。

 もちろん、それには指導主事自身がアクション・リサーチを知らなければなりません。立案者に自信がなければ、研修の成功は期待できないからです。そこで、この6月から毎月1,2回の割合で、私が実施しているアクション・リサーチの研修会の様子を実況放送の形で報告し、また、皆さんから寄せられる疑問への回答をすることによって、この手法の理解を深めていただくことを計画しております。もちろん、支援を受けるのにお金はいりません。また、学会への参加などの義務は一切ありません。

 アクション・リサーチに関する情報の発信は、主として私が当たりますが、次の方々にも時々支援に加わっていただき、また、皆さんから寄せられる質問に答えていただく予定でおります。

松山大学言語コミュニケーション研究科 金森強教授 
神奈川大学 外国語学科 高橋一幸教授  

 また、高知工科大学の長崎先生には、事務局とし活躍いただくだけでなく、高知県でアクション・リサーチを5年間継続してこられた経験を生かして支援に関っていただきます。

私たちは、支援の内容とスケジュールの概略を次のように考えています。

1.中学・高校の英語科教員を対象にした英語授業改善のためのアクション・リサーチ

ねらい:自分の授業実践を振り返り問題点を発見し、生徒と協力しながら改善のための対策を積み上げることによって、生徒理解を深め、英語授業力を伸ばすばかりでなく、プロとしての教師の役割について認識を深める。1学期はリサーチの進め方を体験的に理解し、2学期に各自学校で実践、成果を12月か1月にまとめる。

1) 6-7月 アクション・リサーチの手法を学習し、ミニ・リサーチを実践し理解を確かめる。   
2) 8月 期末試験の成績や授業を振り返り、授業の問題点を発見し、仮設を立てる。
3)9-10 月 仮説の実践。実践記録をポートフォリオに集め、振り返りをする。
4)11-12 月 実践の様子で仮説を変更する。期末テストの成績などの結果の検証。
5) 1 月 レポートにまとめる。発表と、研修全体の評価。次年度に向けて具体的な研修ス ケジュールを立案する。

2.英語活動に不慣れな小学校教員の指導力向上のためのアクション・リサーチ

ねらい:英語に不慣れな小学校教員が、自信をもって英語活動に取り組めるようにするために段階を踏んだアクション・リサーチによる指導力向上と授業改善。

1) 6-7月 英語活動の目標を理解する。英語活動の一コマ分(あるいはその一部)を観察したり、ビデオに録画することによって現状把握の基礎データーを得る。また、挨拶、チャント、歌に用いられている英語のリズムやイントネーションに注意し習得を計る。
2) 8月 挨拶や歌、チャントに加えて、単語やきまり文句の発音に注意する。また、ゲームを楽しく指導力も身につける。あらに、4月に集めた基礎データーや子どもの感想、授業ノートなどから、夏休み以降の授業改善の焦点を明らかにし、段階を踏んだ対策を計画する。
3) 9-12 月 以下、授業改善の対策をアクション・リサーチのプロセスにならって実施し、プロセスをポートフォリオに残すと同時に、研究会で報告し、相互に意見交換して改善を目指す。この間、一度は教室で研究授業をする。
4) 12-1月 研究成果の発表と研修全体の評価。

 以上です。私たちからのメールは、1回につきA4 で2枚程度までとし、読む側の負担にならないように配慮します。この支援に関するメールは、全て、事務局の長崎先生から発信されます。質問などがある場合には、長崎先生にお寄せください。

 それでは、私たちの意をご理解いただき、多くのかたがこの計画に参加くださいますようお願いいたします。

「英語教員のためのアクション・リサーチ支援ネットワーク」開設について(ご案内)

2008.6.16
各都道府県・政令指定都市教育委員会事務局
各都道府県・政令指定都市教育センター
  小学校・中学校・高等学校教育担当部課
外国語教育担当指導主事 様

英語教員のためのアクション・リサーチ支援ネットワーク
                            (主宰 松山大学教授 佐野正之)

「英語教員のためのアクション・リサーチ支援ネットワーク」開設について(ご案内)

 初夏の候、皆さまにおかれましては、ご多忙な毎日をお過ごしのことと思います。

さて、この5年間で、全国の各都道府県等において、文部科学省の「「英語が使える日本人」育成のための行動計画」にもとづき、英語教員の指導力向上のための研修が実施されました。

その中で、私たちは、アクション・リサーチを中核にした指導力向上のための研修を立案し、実施して参りました。最近、その成果を検証した結果、この研修の進め方は、講義中心の研修よりも、授業改善や教員の授業改善の意欲を高める上で効果があると確信するに至りました。

そこで、アクション・リサーチを、今後の英語教員研修に役立てていただくために、指導主事の皆さんを対象とした、オンラインでの支援システムを開設することにいたしました。開設の趣旨や内容の詳細については、別紙「アクション・リサーチのすすめ:指導主事の皆さんへ」をご覧ください。

つきましては、「英語教員のためのアクション・リサーチ支援ネットワーク」に登録を希望される方は、下記によりお申し込みください。



1 目 的 
(1)小学校、中学校、高等学校の英語科教員指導力向上のための研修に、アクション・リサーチを導入・実施するためのノウハウの習得
(2)現職英語教員の力量形成に資することのできる指導主事のメンタリング能力の向上

2 対 象  英語担当指導主事、研修担当者及び英語教員の指導力向上に関心のある方

3 方 法 
(1)電子メールによるオンライン・レクチャーの定期的配信
(2)受講者支援(メンタリング)に関する指導主事・研修担当者への助言

4 申込方法  以下のいずれかの方法でお願いします。
(1)「所属」、「職名」、「メールアドレス」を記入のうえ、電子メールで申し込む。
送付先: nagasaki.masahiro@kochi-tech.ac.jp
(2)「英語教員のためのアクション・リサーチ支援ネットワーク」のページ(http://eflteacherinaction.blogspot.com/) にアクセスし、登録申込フォームに必要事項を入力して送信する。

【事務局・問い合わせ先】
 高知工科大学 共通教育教室 准教授 長﨑政浩
住所 〒782-8502 高知県香美市土佐山田町宮ノ口185
  電話 0887-57-2105 (ダイヤルイン)
  電子メール nagasaki.masahiro@kochi-tech.ac.jp

Tuesday, June 10, 2008

アクション・リサーチと教員研修

松山大学言語コミュニケーション研究科教授 佐野正之
   
 このレポートのねらいは、英語教員研修でのアクション・リサーチの意義を探り、今後の研修計画に役だつヒントを得ることである。特に、平成19年度まで5年間、全国で実施された悉皆研修では、『ガイドブック』に言及されたことも手伝って、かなりの数の教育センターがアクション・リサーチを研修プログラムに取り入れてきた。私個人でも、アクション・リサーチの講演をした都道府県は、この期間に述べ数で70をくだらないだろう。だが、アクション・リサーチを取り入れたことは、本当に意味があったのか。あったとすれば、どの部分か。悉皆研修が終了した今、立ち止まって振り返り、総括して今後に生かすことが必要である。

 このレポートは2部構成である。第1部は、「指導主事への面談調査」というタイトルで、私が平成20年2月から3月にかけて、松山大学からの研究助成を得て、それまでに講演で訪れた県や都市の教育センターのうち10箇所を訪れ、悉皆研修(一部年次研修)に直接関わった指導主事(前指導主事も含む)と面談した結果のまとめである。面談の目的は、研修の立案と実施に関った指導主事が当の研修をどのように評価し、また、そこでのアクション・リサーチをどう考えておられるかについて本音を聞くことである。そのために、センターの固有名詞は伏し、発言者は特定できないように配慮するという約束でインタビューを実施している。匿名で本音を話していただき、そこから今後のヒントを得るというのが第1部のねらいである。

第2部は、「受講者へのアンケート調査」というタイトルで、受講者が研修やアクション・リサーチをどのように評価したかを、高知県のアンケート調査やコメントを例に紹介し、考察を加えたものである。この部分は、高知工科大学の長崎先生に書いていただく予定である。高知県を選んだ理由は、アクション・リサーチをもっとも系統的に取り入れた県の一つであり、さらに、研修目標を「評価規準」という形で設定し、年ごとに成果を『報告書』で公表していること、また、受講者の総数も今年は約100名(過去5年間では約400名)で、数値的な処理も比較的容易であるなどの理由からである。

もちろん、アクション・リサーチの効果を正確に知るには、研修直後の調査だけでなく、1年後や2年後に研修がどのように教員の意識改革や授業改善に結びついたか、さらには、生徒の視点からの調査も必要だろう。しかし、悉皆研修後の研修の在り方が模索されている今、さしあたりは上記の2点から成果と問題点を整理し、今後に生かすことが急務だと考え、論文にまとめることにした。(いずれも、pdfファイルにて掲載。)

 第1部 指導主事への面談調査 (佐野正之)

 第2部「受講者へのアンケート調査」 (長崎政浩)

Sunday, June 8, 2008

登録希望メール送信フォーム

「英語教員のためのアクション・リサーチ支援ネットワーク」に登録を希望される方は、下記のフォームに、必要事項をご記入いただき、「確認」ボタンを押してください。確認画面が出ますので、記載内容を確認していただき「送信」ボタンを押してください。

登録していただくと、

(1)電子メールによるオンライン・レクチャーの定期的配信
(2)受講者支援(メンタリング)に関する指導主事・研修担当者への助言

を受けることができるようになります。

このネットワークは、英語教育研究と英語教員の自己成長を進めていくことを目的とした、ボランタリーなものですので、費用等は一切必要ありません。

【記入する内容】
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「送信内容」(勤務先及び登録を希望された理由など、かまわない範囲でご記入ください。)