Tuesday, June 10, 2008

アクション・リサーチと教員研修

松山大学言語コミュニケーション研究科教授 佐野正之
   
 このレポートのねらいは、英語教員研修でのアクション・リサーチの意義を探り、今後の研修計画に役だつヒントを得ることである。特に、平成19年度まで5年間、全国で実施された悉皆研修では、『ガイドブック』に言及されたことも手伝って、かなりの数の教育センターがアクション・リサーチを研修プログラムに取り入れてきた。私個人でも、アクション・リサーチの講演をした都道府県は、この期間に述べ数で70をくだらないだろう。だが、アクション・リサーチを取り入れたことは、本当に意味があったのか。あったとすれば、どの部分か。悉皆研修が終了した今、立ち止まって振り返り、総括して今後に生かすことが必要である。

 このレポートは2部構成である。第1部は、「指導主事への面談調査」というタイトルで、私が平成20年2月から3月にかけて、松山大学からの研究助成を得て、それまでに講演で訪れた県や都市の教育センターのうち10箇所を訪れ、悉皆研修(一部年次研修)に直接関わった指導主事(前指導主事も含む)と面談した結果のまとめである。面談の目的は、研修の立案と実施に関った指導主事が当の研修をどのように評価し、また、そこでのアクション・リサーチをどう考えておられるかについて本音を聞くことである。そのために、センターの固有名詞は伏し、発言者は特定できないように配慮するという約束でインタビューを実施している。匿名で本音を話していただき、そこから今後のヒントを得るというのが第1部のねらいである。

第2部は、「受講者へのアンケート調査」というタイトルで、受講者が研修やアクション・リサーチをどのように評価したかを、高知県のアンケート調査やコメントを例に紹介し、考察を加えたものである。この部分は、高知工科大学の長崎先生に書いていただく予定である。高知県を選んだ理由は、アクション・リサーチをもっとも系統的に取り入れた県の一つであり、さらに、研修目標を「評価規準」という形で設定し、年ごとに成果を『報告書』で公表していること、また、受講者の総数も今年は約100名(過去5年間では約400名)で、数値的な処理も比較的容易であるなどの理由からである。

もちろん、アクション・リサーチの効果を正確に知るには、研修直後の調査だけでなく、1年後や2年後に研修がどのように教員の意識改革や授業改善に結びついたか、さらには、生徒の視点からの調査も必要だろう。しかし、悉皆研修後の研修の在り方が模索されている今、さしあたりは上記の2点から成果と問題点を整理し、今後に生かすことが急務だと考え、論文にまとめることにした。(いずれも、pdfファイルにて掲載。)

 第1部 指導主事への面談調査 (佐野正之)

 第2部「受講者へのアンケート調査」 (長崎政浩)

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