Monday, June 16, 2008

アクション・リサーチのすすめ:指導主事の皆さんへ

松山大学言語コミュニケーション研究科教授 佐野正之



あじさいの花が美しい季節になりました。ご多忙な毎日をお過ごしのことと思います。

 さて、私は過去5年間、各地の指導主事と協力しながら、アクション・リサーチを中核にした悉皆研修を立案し、実施して参りました。最近、その成果を検証した結果、この研修の進め方は、講演で情報や技能の伝達をねらいとした研修よりも、教師の授業改善に取り組む意欲を高める上で効果があると確信するに至りました。詳細は事務局のホームページにある「教員研修とアクション・リサーチ」という拙論を参照ください。アクション・リサーチに取り組んだ40数名の指導主事や教員との覆面対談のまとめが報告してあります。そこで、ここで得た結論をもとに、アクション・リサーチの発想や手法を、皆さんの今後の研修計画の参考にしていただければと幸いと考え、メールによる指導主事への支援を計画した次第です。

 というのも、どこの研修センターでも予算が削減されて外部講師への依頼が難しくなっていると聞きます。しかし、年次研修は継続され、じきに免許状更新の研修も計画しなければなりません。さらに、小学校英語活動への早急な対応も求められています。このような場合に、もし、指導主事がアクション・リサーチを中心に研修を計画し実施することができれば、外部講師に依存する以上の効果をあげる可能性があるのです。すでに、悉皆研修の中で、これを証明したケースがあります。細部は上記の拙論をご覧ください。私は、志を一つにする英語教育の専門家たちと協力し、こうした情報をメールでお知らせし、また、皆さんからの質問に答えたり、相談を受けることによって、全国の教員研修を一層充実したものにしたいと願っております。

 もちろん、それには指導主事自身がアクション・リサーチを知らなければなりません。立案者に自信がなければ、研修の成功は期待できないからです。そこで、この6月から毎月1,2回の割合で、私が実施しているアクション・リサーチの研修会の様子を実況放送の形で報告し、また、皆さんから寄せられる疑問への回答をすることによって、この手法の理解を深めていただくことを計画しております。もちろん、支援を受けるのにお金はいりません。また、学会への参加などの義務は一切ありません。

 アクション・リサーチに関する情報の発信は、主として私が当たりますが、次の方々にも時々支援に加わっていただき、また、皆さんから寄せられる質問に答えていただく予定でおります。

松山大学言語コミュニケーション研究科 金森強教授 
神奈川大学 外国語学科 高橋一幸教授  

 また、高知工科大学の長崎先生には、事務局とし活躍いただくだけでなく、高知県でアクション・リサーチを5年間継続してこられた経験を生かして支援に関っていただきます。

私たちは、支援の内容とスケジュールの概略を次のように考えています。

1.中学・高校の英語科教員を対象にした英語授業改善のためのアクション・リサーチ

ねらい:自分の授業実践を振り返り問題点を発見し、生徒と協力しながら改善のための対策を積み上げることによって、生徒理解を深め、英語授業力を伸ばすばかりでなく、プロとしての教師の役割について認識を深める。1学期はリサーチの進め方を体験的に理解し、2学期に各自学校で実践、成果を12月か1月にまとめる。

1) 6-7月 アクション・リサーチの手法を学習し、ミニ・リサーチを実践し理解を確かめる。   
2) 8月 期末試験の成績や授業を振り返り、授業の問題点を発見し、仮設を立てる。
3)9-10 月 仮説の実践。実践記録をポートフォリオに集め、振り返りをする。
4)11-12 月 実践の様子で仮説を変更する。期末テストの成績などの結果の検証。
5) 1 月 レポートにまとめる。発表と、研修全体の評価。次年度に向けて具体的な研修ス ケジュールを立案する。

2.英語活動に不慣れな小学校教員の指導力向上のためのアクション・リサーチ

ねらい:英語に不慣れな小学校教員が、自信をもって英語活動に取り組めるようにするために段階を踏んだアクション・リサーチによる指導力向上と授業改善。

1) 6-7月 英語活動の目標を理解する。英語活動の一コマ分(あるいはその一部)を観察したり、ビデオに録画することによって現状把握の基礎データーを得る。また、挨拶、チャント、歌に用いられている英語のリズムやイントネーションに注意し習得を計る。
2) 8月 挨拶や歌、チャントに加えて、単語やきまり文句の発音に注意する。また、ゲームを楽しく指導力も身につける。あらに、4月に集めた基礎データーや子どもの感想、授業ノートなどから、夏休み以降の授業改善の焦点を明らかにし、段階を踏んだ対策を計画する。
3) 9-12 月 以下、授業改善の対策をアクション・リサーチのプロセスにならって実施し、プロセスをポートフォリオに残すと同時に、研究会で報告し、相互に意見交換して改善を目指す。この間、一度は教室で研究授業をする。
4) 12-1月 研究成果の発表と研修全体の評価。

 以上です。私たちからのメールは、1回につきA4 で2枚程度までとし、読む側の負担にならないように配慮します。この支援に関するメールは、全て、事務局の長崎先生から発信されます。質問などがある場合には、長崎先生にお寄せください。

 それでは、私たちの意をご理解いただき、多くのかたがこの計画に参加くださいますようお願いいたします。

No comments: