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Tuesday, November 4, 2008

私のアクションリサーチ File #2-2 山田 憲昭先生(高知西高校)



 前編において、私とアクション・リサーチ(以降AR)の出会いについて、個人的な思いを含めたレポートを書いた。この後編では、昨年度(2007年度)高知西高校で実施したAR事例を具体的に報告したい。
まず、私がAR対象として選んだのは、高知西高校普通科・2年生(39名)のクラスのライティング(2単位)の授業である。4月当初のスタディ・サポート及び6月の中間考査によると、そのクラスの英語力クラス平均値は同じ学年の中で最も低いという結果であった。また、家庭学習の時間が少なく、平日で10分程度であった。さらに、1年次からの成績不振者5~6名存在し、授業に対する好感度も低く、「英語嫌い」が目立っていた。一方、4~6月の授業観察では、教員の話を静かに聴き、ノートも一応取る、いわゆる「まじめに授業を受ける生徒集団」という一面もあった。

 このような背景を踏まえて、このクラスの生徒たちの英語力の向上のために、以下のようなリサーチ・クエスチョン及び仮説および実施計画を立て、7月以降には授業実践を開始した。

リサーチ・クエスチョン 英語に対する苦手意識が強いクラスで、生徒が自信を持って授業中の活動に参加し、「英語がわかる・できる・楽しい」という実感が持て、基礎的な英語力を定着させるには、どのような指導が効果的であろうか?

仮説1―授業開始後すぐに、簡単な英語ゲームを実施することで、英語学習の雰囲気を向上させることができるだろう。

仮説2―授業中に行う教科書中の課題Task1・2・3をハンドアウト化して、取り組みやすくすることで、生徒の授業中の活動が活性化するだろう。

仮説3―月1回テーマを設定しての英作文課題「月一課題」を発展・改良し、模試や入試など教科書以外のライティング課題を導入することで、基本的な英語力の大切さを理解させ、家庭学習を活性化させることができるだろう。

具体的実践を通じて、まずわかったことは、仮説1の英語ゲームが授業にメリハリを作り、多くの生徒に受け入れられる活動であるということであった。しかし同時に、授業が予定通りに進まないという弊害も生じた。そこで考えたのは、仮説2のハンドアウトを改良し、生徒の授業中の英文筆写時間を短縮することができる形式(穴埋め・並び替え)に変更するということであった。時間短縮の結果生じる「浮いた時間」が英語ゲームのための時間(約5~7分)ということである。英語ゲームの結果は、平常の成績に加味することとした。ゲーム内容は、教師が選んだ教科書の既習語1~2語を、1分程度の時間内に、簡単な英語を使ってペアの一方が説明し、もう一方はその説明を聞いて語を言い当てるというものであった。仮説3については、残念ながら時間の都合で十分に取り組めなかった。

 この間の生徒の変容には、指導者の私には大きく思えた。4月当初は、緊張感はあるものの、活動的・協力的でなく、英語学習に自信がない様子の生徒が目立っていた。しかし、9月~11月に仮説1・2による「英語ゲームの導入」と「ハンドアウトの改良」を実施することで、生徒間に次第に打ち解けた雰囲気が生まれた。調査はしていないが、ペアで英語ゲームを行うことがそういう雰囲気が促進した可能性もあると思われる。また、11月に実施したアンケート調査では「英語学習の楽しさ感・好感度」の上昇が見られ、12月に実施した後期中間考査では、6月に55.1点であったクラス平均点が59.9点にまで向上した。徐々に生徒に「授業を楽しむ姿勢」、「授業に参加する自信」のようなものが芽生えてきたように感じた。

 実は、4月当初、対象クラスが2年生7クラス中最も英語力が低いクラスだとわかり、私は少し不安を抱いていた。しかし、6月の中間考査後、アンケート調査を実施し、「英語授業に好意的」「成績を何とかしたい」と考えている生徒が3分の1程度存在しているという事実を知り、「この3分の1の生徒の力を借りて、授業を改善し、彼らの英語力をプラス方向へ向かわせることができるのではないか」と徐々に思うようになった。不安を押し殺しながら実践を継続し、ARを開始して1ヶ月を過ぎた10月頃から生徒が積極的に授業に参加し始めていることに気付いた。生徒の変容が目に見えてわかるようになり、嬉しく感じる自分がいた。教員としての喜びが、生徒の成長とともにあることを改めて認識した。

さて、最後に、今回のARで実施した種々のアンケート調査で見られた生徒の学習動機と学力向上に関わる重要な知見を報告したい。

アンケート調査によると、仮説1・2を実施することで、授業を「好きである」「まあまあ好きである」と回答した生徒が37.1%(7月)から65.8%(11月)にまで向上した。肯定的に回答した生徒の多くは、その理由として「わかりやすい」「楽しい」「おもしろい」「雰囲気がいい」「勉強になる」「ミステリー・ワードが好き」等を挙げた。さらに、11月時点で81.5%の生徒が、英語ゲームは英語力向上に「かなり役立つと思う」「まあまあ役立つと思う」と回答した。生徒たちは、その理由として「説明の仕方を学べる」「表現力が向上する」「単語を覚えられる」等、自分自身が役立ったと実感できた様々な理由を記述式で回答したが、それらは私の想定をはるかに超える内容であった。

これらから言えるのは、単にfun activityとしてゲーム活動を授業に取り入れた経緯はあったけれども、実は
それらのゲーム活動が「英語力の向上を生徒が実感できるような活動」であったことが生徒の学習動機を高めた可能性が大きい、ということである。授業と何の脈絡も発展性も、継続性もないゲーム活動であったならば、果たして生徒のやる気はこのように変容したであろうか。残念ながら、今回のARではこの1種類のゲーム活動しか行わなかったので、この疑問に正確に答えるデータはない。しかし、英語学習の雰囲気を変えることができればそれでいいと考えていた私には、生徒が予想外以上に良い方向に反応したことは本当に大きな発見・知見であった。

英語指導の現場では、ALTとのT・T授業等を中心に、ゲーム活動を頻繁に授業に取り入れているケースが見られるが、そういう先生方には是非「授業の雰囲気作り」や「生徒の注目を即効的に集める」という効果からもう一歩踏み込んで「生徒に英語力が向上しているという実感を与える」という効果を考えたゲーム活動作りにチャレンジされてはどうかと思う。

☆報告書へのリンク (現在準備中)

☆連絡先 (現所属)高知県教育委員会事務局高等学校課
     TEL:088-821-4850
     E-mail:noriaki_yamada@kt5.kochinet.ed.jp

Friday, June 27, 2008

私のアクションリサーチ File #2-1 山田 憲昭先生(高知西高校)



最近よく「英語教員の幸せとは何だろう?」と自問する。英語教員ならば誰でも一度は私のように自問したことがあるのではないだろうか。この問いへの答えはそれぞれの教員で違うのかもしれないが、今の私は「生徒がいて、毎日授業ができること。」という答えにたどり着く。そして、これはアクションリサーチが私に教えてくれた最も大切なことの一つでもある。

私は、1999年~2007年の9年間を、自らの英語教員としての人生の覚醒期であると位置付けている。人生の中で非常に重要な意味を持つ期間であったと思っている。この9年以前の生活とこの9年間とを比べると、ちょっとした変化がある。それは、人との出会いをきっかけとした英語教員としての「覚醒・自覚」だと思っている。

在籍した高知西高校において担当した全ての授業は勿論であるが、全英連高知大会の公開授業研究とその追研究、高知西高校におけるSELHi研究開発、高知県英語ディベート大会に関わる指導法研究、等様々な課題やテーマを提供してくれた生徒諸君、共に課題解決に向けて汗を流せた教員仲間がいなければ、気付かなかっただろう。そして、アクションリサーチという「自らの手で自らの授業を改善していくという手法」に出会わなければ、いつまでも根拠なしに生徒に責任を擦りつける教員の一人であったかもしれない。

この9年間の私の「授業改善」を支えてくれたアクションリサーチに感謝している。そして、私たち高知県の中高英語教員に「アクションリサーチ」という共通言語を定着させてくれた5年間の高知県英語教員研修に感謝している。(前編おわり)

☆報告書へのリンク (現在準備中)

☆連絡先 (現所属)高知県教育委員会事務局高等学校課
     TEL:088-821-4850
     E-mail:noriaki_yamada@kt5.kochinet.ed.jp

Tuesday, June 24, 2008

私のアクションリサーチ File #1 森 隆彦先生(高知追手前高校)



 私は英語教員指導力向上研修初年度の受講者でした。受講前、アクション・サーチ(AR)がどのようなものか全然知りませんでしたが、関連書籍を読んだり、研究実践する中で、自分の授業改善に大いに役立ちました。

 ARの研究は「速読速解力のための音読」を中心に行いました。自分の報告書を読み返してみると、やっていることは一部分的だったと思いますが、系統だったARの取組に、「ようやったなあ」と今更ながら感激しています。

 計画の実践の中では、シャドーイングに重点をおいて取り組んだのですが、これはその夏の集中研修で受けた、「KHシステムの同時通訳練習法」の影響が大きかったです。今まで自分では経験したことのない斬新なシャドーイングという練習法にはまってしまい、秋からのReadingの授業に早速取り入れました。

 最初は「シャドーイングなんてできっこない」と生徒からは大ブーイングでしたが、CDを生徒全員に持たせ、家庭学習用に記録用紙をつくり、シャドーイングテストもすることにして粘りました。

 3ヶ月ほどかかりましたが、生徒たちは激変しました。シャドーイングは皆完璧になり、特に英語が苦手だった男子生徒の上達ぶりには感動しました。シャドーイングの効果なのか音読を嫌がらなくなり、授業に活気がでるようになりました。

 また、「以前より英文を読むスピードが上がったような気がする」「リスニングも聞き取りが以前より楽になった」などの声があがるなど、自分自身の変化を感じる生徒が多かったと思います。

 授業が変われば、生徒が変わる。まさしくアクション・リサーチはそのことをはっきり教えてくれた私の先生でした。

☆報告書へのリンク 速読速解力を向上させるための指導の工夫

☆連絡先 (現所属)高知県教育委員会事務局高等学校課
     TEL:088-821-4850
     E-mail:takahiko_mori@ken2.pref.kochi.lg.jp

(写真は、ポスターセッションで発表を聞く森隆彦先生:中央)