Saturday, December 13, 2008
報告「アクション・リサーチ交流会 (200811.30開催)」
はじめに
当初の計画からすると、今回はARS@MUのメンバーのARへの取り組や、支援の様子をレポートするはずでしたが、今回と次回の2回に渡り、11月29日に松山大学で行われた「アクション・リサーチ交流会」の様子と、そこで私が行った基調講演の概要をお知らせし、その後、計画に戻り、ARS@MUでのARや支援の具体例を紹介し、また、他のARのレポートと私の解説を紹介することにしたいと思います。さっそく、交流会の様子から。
参加者の人数と全体的な感想
ARS@MUのメンバーが指導主事を含めて27名、他の参加者が県内から22名、県外からは横浜の会から6名のほかに、高知、広島、京都、三重、埼玉から、総勢80名の参加者を得ました。主催者の予想を超えた人数でした。また、「支援者の会」からも、山形、福島、石川から、ARへの取り組みや受講者の感想、今後の抱負などを書いた挨拶をメールで寄せていただきました。会場で紹介させていただきましたが、参加者には大きなインパクトがあったようです。全体的な感想としては、次のようなものがあります。
*全国に真剣に授業改善に取り組んでいらっしゃる先生がこんなに多いことを知ったことが大きな発見でした。
*まずは、こんなにも多くのARの実践者の先生がいらっしゃることに感激しました。一人では継続が難しいと感じているので、ネットワークを作り、自分の地域でも「ARの会」を作りたいです。
*遠くから、多くの先生がお見えになっていて、感激しました。
*今回の研修を企画・運営していただきありがとうございました。とても勉強になりました。今後、このような会があれば、是非また、参加したいと思います。
*内容が大変よく、来てよかったと思いました。現場の忙しさに流されて、滞っていたアンケート調査を再開しようというエネルギーをいただけたことが、今回参加させていただいた一番の収穫でした。
当日の流れに沿ってー1(開会から基調講演まで)
1)開会の挨拶:鈴鹿愛媛県指導主事から、ARS@MUと横浜の会の交流を目的にしたインフォーマルな会なので、相互の交流を深めて欲しいと会の趣旨が説明されました。
2) 歓迎の言葉:金森先生から、歓迎の言葉と同時に、松山大学では、来年度の大学院の行事として、小学校英語活動の研究とARの研究を毎月1回開催する予算が確保できたので、この会を継続、発展させていきたいという決意が語られました。
3) 「AR支援ネットワーク」からの3通のメールの紹介。
4) 基調講演:日本の英語教育の低迷は、国の政策、教員養成、現場の実践が場当たり的で筋が通っていない。その対極にあるのがフィンランドで、そこで行われているresearch-based teacher education やARへの取り組みから学ぶことが沢山あるのではないかという趣旨の話をしました。詳細は次回の通信で報告します。
当日の流れに沿ってー2(研究発表)
2会場に分かれて、横浜の会から4名、ARS@MUから2名の発表がありました。タイトルは、以前にお知らせした通りです。いずれの発表も、参会者には大きなインパクトを与えたようで、次のような感想があります。
*一つの会場でやって欲しかった。聞きたい発表ばかりだったから。
*各先生の現場に応じた取り組みが紹介され、自分の課題や悩みと重なり、とても親近感をもって発表を聞くことができました。ありがとうございました。
*すばらしい内容の充実した発表ばかりで、半日ではなく、少なくともまる一日、できれば2日かけてやって欲しかった。
*最近の自分の授業を振り返る機会になった。自分と向き合って、もっと改善していかなければならないと思いました。
*どのクラスにも改革のチャンスはある。教師の取り組みで違いが出てくることを今日の発表を聞いて再認識できた。
*本当の振り返りや反省は、目標を決め、仮説を設定することでやっと本物になることを痛感した。自分の取り組みの甘さを嫌というほど感じさせられた。
など、発表に感動した人が多くいました。
この発表のうち、ARS@MUのメンバーのARを選び、経過を時系列で紹介し、折々に私がどのようなアドバイスを与えたかを、「通信14 号」でお知らせします。
当日の流れに沿ってー3(講演とミニ・シンポ)
1) 長崎先生講演:高知の悉皆研修で5年間に渡りARを実施してきた成果を、教員の指導力のどの部分にARの効果が現れたという視点から、アンケート調査の分析結果を踏まえて解説されました。5年間の実践の重みを感じました。
2) 高橋先生講演:教員養成の歴史をみるとteacher trainingから、教師の主体性を認めたteacher developmentに変わりつつあり、そのことは新技術をただ溜め込んでゆくassimilation ではなく、自己変革をともなうaccommodationを意図しなければならない。このことは、免許状更新の講座でも必要という提案は説得力がありました。
3) ミニ・シンポ:金森先生の司会で、参加者の質問に私が答える形で進行しました。「受験英語とAR」、「ARの仮説はなぜ複数あるのか?」の2点に話しが集中しましたが、時間不足のため、十分ではありませんでした。この2点については次回の通信で説明します。
この部分の感想としては、
*尊敬する先生方がいつも変わらぬ熱い想いをもって活動されている姿を見ると、大変力になりました。
*生の大学の先生の話しが聞けたこと、普段は考えないような、でもとても大切な話を教えていただいて、自分の知識が広がりました。
*普段の取り組の中での疑問に解答が見つかり、パズルが埋まっていくようでした。ありがとうございました。
*フィンランド教育やresearch-mindedであることの重要性、また、アクション・リサーチの理論や調査方法について理解が深まりました。
*国の文部行政が現状を見直し、一本筋を通すことができないなら、せめて自分が関る生徒には、将来を見据えた教育をしたいと思いました。
総合的な評価と来年度のこと
この交流会は、もともとは、横浜の会のメンバーを松山大学に招き、発表を聞いて、愛媛のアクション・リサーチのレベル・アップを意図して計画したものです。ところが、「それだったら愛媛県の教員一般にも開放しようか」「愛媛県以外の人も参加できるようにしようか」「だったら、支援者の会にも知らせようか」というように、次第に規模が広がったものです。しかし、対象者の規模は広がっても目的は変わらず、参会者たちの交流によって、ARの可能性を多くのひとに知って欲しいというものでした。この点に関しては、当日の参会者の様子、発言内容、感想、また、懇親会での会話などを総合すると、予期した以上の成果を挙げたのではないかと思います。愛媛県の教員の中には、「来月からARS@MUに参加させて欲しい」という人も出てきました。
会の成功に気を強くしたからというわけではありませんが、私としては、ARに興味を持っている人たちが年に一度集まり、情報を交換するばかりでなく、互いにエールを交換するハレの場(=祭り)を持つことは意味があると思います。感想からも読み取れるように、現場は決してARにfriendly ではありません。そんななかで、ARをする、しないは別にして、教師としての誇りとresearch mind を持ち続けることは容易なことではなく、とても勇気がいるし、また、周囲の励ましが必要です。その一助として祭りの場を用意し、交流を深める意味は大いにあると私は思います。
これは、まだ、私の個人的な意見ですが、関係者と相談して実現に努めたいと思っています。皆さんのお考えはいかがでしょうか。今年の反省の上に立って、さらに充実した会にしたいと考えていますので、興味のある方は参加を検討ください。事前の準備をしっかりとして、参会者のニーズにそうようにしたいと願っています。
それでは、このメールでは交流会の概要をお知らせしました。次回の通信は、新年のご挨拶と一緒になりますが、交流会で私が行った基調講演の内容を紹介し、それに関して参加者からでた2つの質問、すなわち、「ARではなぜ仮説が複数なのか」「受験英語は駄目なのか」の2点について私見を述べたいと思います。乞うご期待。
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「AR支援ネットワーク通信(12)」(松山大学 佐野正之)からの引用
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