教師の指導と生徒の学習や活動を通して、生徒の中に「質的変容」を引き起こしえたか否か。これが筆者の考える授業成立の要件である。質的変容には、これまで言えなかったことが的確に表現できるようになったなどの「技能」(skill) の変容や、言語や題材内容などについて知らなかったことを知ったという「知識」(knowledge) の変容がある。さらに、技能や知識の変容を通して生じる究極の変容は、生徒たちの日常のものの考え方や感じ方、人との接し方、行動様式などに変化を及ぼす「態度」(attitude) の変容である。ここまで来れば、それはまさに英語「教育」と呼ぶに値しよう。
長期的・短期的視点から、授業を通してどのような変容を生徒に引き起こしたいのか? 看板倒れではなく目標を実現するためには、抽象的な目標を教師・生徒の双方にとって評価可能な具体的活動として設定すること。これが、授業を設計する基盤となる。
指導の鉄則は、レディネスを作ること。
実際の指導では、単位授業にせよ、単元や年間指導計画にせよ、個々の指導過程や活動、1回1回の授業を相互に関連付け、具体的目標(goal)に向かってスモール・ステップを踏んで、無理なく、すべての生徒たちを導く道筋(route)を考えなくてはならない。例えば、1, 2, 3, 4の順序は2, 4, 1, 3ではダメで、1, 2, 3, 4であって初めて効果が上がるのである。指導過程(procedure)や指導計画(syllabus)に、このような説明可能で必然性ある順序が構築されているかどうかを十分に吟味することが授業を設計する上で不可欠なこと、「点として存在する活動や授業を線で結ぶ」ことが肝要である。
Tuesday, July 8, 2008
Tuesday, July 1, 2008
第1回「理想と現実と諦め」 髙橋 一幸(神奈川大学)

生徒たちが目を輝かせ、大きな声で英語を発声し、生き生きと伝達表現活動や自己表現活動に参加する。そのような授業を実現したい。教師であればだれもが願うことである。しかし、その意に反して指導がカラ回りして教師のひとり芝居となって、シラけた沈黙が広がり、まったく無関係な雑談や喧騒のうちに授業終了のチャイムを聞く、といったこともある。そして、心ある教師は自信を失ったり、自己嫌悪に陥ったりするのだが、これは教師として正常な証拠。こういうときに、「こんなできの悪い生徒を教えられるか!」と、授業が成立しない責任のすべてを生徒に転嫁したり、日々くり返される現実への諦めから、問題意識すら麻痺し何の改善意欲も生じなくなれば、教師生命は終わりである。
授業は生徒と教師の双方の努力によって創りあげるもの。生徒が担うべき責任も多いことは事実だが、一人ひとりの生徒が自ら学ぼうとする意欲や態度を育てることが教師本来の仕事であることを考えるなら、プロとしてより大きな責を負うべきことは当然である。「生徒には教師を選ぶ権利はない」のだから。自分の授業を内省(reflect)し、日々その改善を図ることが教師に求められる所以である。「“英語が使える日本人”育成のための戦略構想・行動計画」のもとに5カ年計画で実施された全英語教員対象の「悉皆研修」、また、進行中の「教育改革」の中では不適格教員に対する再研修や現場からの配置換え、教員免許の10年毎の更新制などが現在検討されているが、児童・生徒のためにより良い授業を求めて自分の授業を工夫・改善することは、専門職として教師自らが何を置いてでも率先して、まず取り組むべき課題である。
Monday, June 30, 2008
サポート・メール配信開始
7月1日、「AR支援ネットワーク通信(1)」の配信を開始しました。第1号のタイトルは、「授業とリサーチ」(松山大学 佐野正之)です。このメールを読むためには、メールアドレスを登録していただく必要があります。詳しくは、本ページの右コラムをご参照ください。
【お知らせ】
☆「AR支援ネットワーク通信」は、毎月1日、15日に配信予定です。
☆「AR支援ネットワーク通信」へのメールの返信はできない設定になっています。リサーチについての質問や疑問点がある場合は、事務局の長崎までメールまたは電話でお知らせください。それに回答をいたします。
【お知らせ】
☆「AR支援ネットワーク通信」は、毎月1日、15日に配信予定です。
☆「AR支援ネットワーク通信」へのメールの返信はできない設定になっています。リサーチについての質問や疑問点がある場合は、事務局の長崎までメールまたは電話でお知らせください。それに回答をいたします。
Friday, June 27, 2008
私のアクションリサーチ File #2-1 山田 憲昭先生(高知西高校)

最近よく「英語教員の幸せとは何だろう?」と自問する。英語教員ならば誰でも一度は私のように自問したことがあるのではないだろうか。この問いへの答えはそれぞれの教員で違うのかもしれないが、今の私は「生徒がいて、毎日授業ができること。」という答えにたどり着く。そして、これはアクションリサーチが私に教えてくれた最も大切なことの一つでもある。
私は、1999年~2007年の9年間を、自らの英語教員としての人生の覚醒期であると位置付けている。人生の中で非常に重要な意味を持つ期間であったと思っている。この9年以前の生活とこの9年間とを比べると、ちょっとした変化がある。それは、人との出会いをきっかけとした英語教員としての「覚醒・自覚」だと思っている。
在籍した高知西高校において担当した全ての授業は勿論であるが、全英連高知大会の公開授業研究とその追研究、高知西高校におけるSELHi研究開発、高知県英語ディベート大会に関わる指導法研究、等様々な課題やテーマを提供してくれた生徒諸君、共に課題解決に向けて汗を流せた教員仲間がいなければ、気付かなかっただろう。そして、アクションリサーチという「自らの手で自らの授業を改善していくという手法」に出会わなければ、いつまでも根拠なしに生徒に責任を擦りつける教員の一人であったかもしれない。
この9年間の私の「授業改善」を支えてくれたアクションリサーチに感謝している。そして、私たち高知県の中高英語教員に「アクションリサーチ」という共通言語を定着させてくれた5年間の高知県英語教員研修に感謝している。(前編おわり)
☆報告書へのリンク (現在準備中)
☆連絡先 (現所属)高知県教育委員会事務局高等学校課
TEL:088-821-4850
E-mail:noriaki_yamada@kt5.kochinet.ed.jp
Tuesday, June 24, 2008
私のアクションリサーチ File #1 森 隆彦先生(高知追手前高校)

私は英語教員指導力向上研修初年度の受講者でした。受講前、アクション・サーチ(AR)がどのようなものか全然知りませんでしたが、関連書籍を読んだり、研究実践する中で、自分の授業改善に大いに役立ちました。
ARの研究は「速読速解力のための音読」を中心に行いました。自分の報告書を読み返してみると、やっていることは一部分的だったと思いますが、系統だったARの取組に、「ようやったなあ」と今更ながら感激しています。
計画の実践の中では、シャドーイングに重点をおいて取り組んだのですが、これはその夏の集中研修で受けた、「KHシステムの同時通訳練習法」の影響が大きかったです。今まで自分では経験したことのない斬新なシャドーイングという練習法にはまってしまい、秋からのReadingの授業に早速取り入れました。
最初は「シャドーイングなんてできっこない」と生徒からは大ブーイングでしたが、CDを生徒全員に持たせ、家庭学習用に記録用紙をつくり、シャドーイングテストもすることにして粘りました。
3ヶ月ほどかかりましたが、生徒たちは激変しました。シャドーイングは皆完璧になり、特に英語が苦手だった男子生徒の上達ぶりには感動しました。シャドーイングの効果なのか音読を嫌がらなくなり、授業に活気がでるようになりました。
また、「以前より英文を読むスピードが上がったような気がする」「リスニングも聞き取りが以前より楽になった」などの声があがるなど、自分自身の変化を感じる生徒が多かったと思います。
授業が変われば、生徒が変わる。まさしくアクション・リサーチはそのことをはっきり教えてくれた私の先生でした。
☆報告書へのリンク 速読速解力を向上させるための指導の工夫
☆連絡先 (現所属)高知県教育委員会事務局高等学校課
TEL:088-821-4850
E-mail:takahiko_mori@ken2.pref.kochi.lg.jp
(写真は、ポスターセッションで発表を聞く森隆彦先生:中央)
Monday, June 23, 2008
Monday, June 16, 2008
アクション・リサーチのすすめ:指導主事の皆さんへ
松山大学言語コミュニケーション研究科教授 佐野正之

あじさいの花が美しい季節になりました。ご多忙な毎日をお過ごしのことと思います。
さて、私は過去5年間、各地の指導主事と協力しながら、アクション・リサーチを中核にした悉皆研修を立案し、実施して参りました。最近、その成果を検証した結果、この研修の進め方は、講演で情報や技能の伝達をねらいとした研修よりも、教師の授業改善に取り組む意欲を高める上で効果があると確信するに至りました。詳細は事務局のホームページにある「教員研修とアクション・リサーチ」という拙論を参照ください。アクション・リサーチに取り組んだ40数名の指導主事や教員との覆面対談のまとめが報告してあります。そこで、ここで得た結論をもとに、アクション・リサーチの発想や手法を、皆さんの今後の研修計画の参考にしていただければと幸いと考え、メールによる指導主事への支援を計画した次第です。
というのも、どこの研修センターでも予算が削減されて外部講師への依頼が難しくなっていると聞きます。しかし、年次研修は継続され、じきに免許状更新の研修も計画しなければなりません。さらに、小学校英語活動への早急な対応も求められています。このような場合に、もし、指導主事がアクション・リサーチを中心に研修を計画し実施することができれば、外部講師に依存する以上の効果をあげる可能性があるのです。すでに、悉皆研修の中で、これを証明したケースがあります。細部は上記の拙論をご覧ください。私は、志を一つにする英語教育の専門家たちと協力し、こうした情報をメールでお知らせし、また、皆さんからの質問に答えたり、相談を受けることによって、全国の教員研修を一層充実したものにしたいと願っております。
もちろん、それには指導主事自身がアクション・リサーチを知らなければなりません。立案者に自信がなければ、研修の成功は期待できないからです。そこで、この6月から毎月1,2回の割合で、私が実施しているアクション・リサーチの研修会の様子を実況放送の形で報告し、また、皆さんから寄せられる疑問への回答をすることによって、この手法の理解を深めていただくことを計画しております。もちろん、支援を受けるのにお金はいりません。また、学会への参加などの義務は一切ありません。
アクション・リサーチに関する情報の発信は、主として私が当たりますが、次の方々にも時々支援に加わっていただき、また、皆さんから寄せられる質問に答えていただく予定でおります。
松山大学言語コミュニケーション研究科 金森強教授
神奈川大学 外国語学科 高橋一幸教授
また、高知工科大学の長崎先生には、事務局とし活躍いただくだけでなく、高知県でアクション・リサーチを5年間継続してこられた経験を生かして支援に関っていただきます。
私たちは、支援の内容とスケジュールの概略を次のように考えています。
1.中学・高校の英語科教員を対象にした英語授業改善のためのアクション・リサーチ
ねらい:自分の授業実践を振り返り問題点を発見し、生徒と協力しながら改善のための対策を積み上げることによって、生徒理解を深め、英語授業力を伸ばすばかりでなく、プロとしての教師の役割について認識を深める。1学期はリサーチの進め方を体験的に理解し、2学期に各自学校で実践、成果を12月か1月にまとめる。
1) 6-7月 アクション・リサーチの手法を学習し、ミニ・リサーチを実践し理解を確かめる。
2) 8月 期末試験の成績や授業を振り返り、授業の問題点を発見し、仮設を立てる。
3)9-10 月 仮説の実践。実践記録をポートフォリオに集め、振り返りをする。
4)11-12 月 実践の様子で仮説を変更する。期末テストの成績などの結果の検証。
5) 1 月 レポートにまとめる。発表と、研修全体の評価。次年度に向けて具体的な研修ス ケジュールを立案する。
2.英語活動に不慣れな小学校教員の指導力向上のためのアクション・リサーチ
ねらい:英語に不慣れな小学校教員が、自信をもって英語活動に取り組めるようにするために段階を踏んだアクション・リサーチによる指導力向上と授業改善。
1) 6-7月 英語活動の目標を理解する。英語活動の一コマ分(あるいはその一部)を観察したり、ビデオに録画することによって現状把握の基礎データーを得る。また、挨拶、チャント、歌に用いられている英語のリズムやイントネーションに注意し習得を計る。
2) 8月 挨拶や歌、チャントに加えて、単語やきまり文句の発音に注意する。また、ゲームを楽しく指導力も身につける。あらに、4月に集めた基礎データーや子どもの感想、授業ノートなどから、夏休み以降の授業改善の焦点を明らかにし、段階を踏んだ対策を計画する。
3) 9-12 月 以下、授業改善の対策をアクション・リサーチのプロセスにならって実施し、プロセスをポートフォリオに残すと同時に、研究会で報告し、相互に意見交換して改善を目指す。この間、一度は教室で研究授業をする。
4) 12-1月 研究成果の発表と研修全体の評価。
以上です。私たちからのメールは、1回につきA4 で2枚程度までとし、読む側の負担にならないように配慮します。この支援に関するメールは、全て、事務局の長崎先生から発信されます。質問などがある場合には、長崎先生にお寄せください。
それでは、私たちの意をご理解いただき、多くのかたがこの計画に参加くださいますようお願いいたします。

あじさいの花が美しい季節になりました。ご多忙な毎日をお過ごしのことと思います。
さて、私は過去5年間、各地の指導主事と協力しながら、アクション・リサーチを中核にした悉皆研修を立案し、実施して参りました。最近、その成果を検証した結果、この研修の進め方は、講演で情報や技能の伝達をねらいとした研修よりも、教師の授業改善に取り組む意欲を高める上で効果があると確信するに至りました。詳細は事務局のホームページにある「教員研修とアクション・リサーチ」という拙論を参照ください。アクション・リサーチに取り組んだ40数名の指導主事や教員との覆面対談のまとめが報告してあります。そこで、ここで得た結論をもとに、アクション・リサーチの発想や手法を、皆さんの今後の研修計画の参考にしていただければと幸いと考え、メールによる指導主事への支援を計画した次第です。
というのも、どこの研修センターでも予算が削減されて外部講師への依頼が難しくなっていると聞きます。しかし、年次研修は継続され、じきに免許状更新の研修も計画しなければなりません。さらに、小学校英語活動への早急な対応も求められています。このような場合に、もし、指導主事がアクション・リサーチを中心に研修を計画し実施することができれば、外部講師に依存する以上の効果をあげる可能性があるのです。すでに、悉皆研修の中で、これを証明したケースがあります。細部は上記の拙論をご覧ください。私は、志を一つにする英語教育の専門家たちと協力し、こうした情報をメールでお知らせし、また、皆さんからの質問に答えたり、相談を受けることによって、全国の教員研修を一層充実したものにしたいと願っております。
もちろん、それには指導主事自身がアクション・リサーチを知らなければなりません。立案者に自信がなければ、研修の成功は期待できないからです。そこで、この6月から毎月1,2回の割合で、私が実施しているアクション・リサーチの研修会の様子を実況放送の形で報告し、また、皆さんから寄せられる疑問への回答をすることによって、この手法の理解を深めていただくことを計画しております。もちろん、支援を受けるのにお金はいりません。また、学会への参加などの義務は一切ありません。
アクション・リサーチに関する情報の発信は、主として私が当たりますが、次の方々にも時々支援に加わっていただき、また、皆さんから寄せられる質問に答えていただく予定でおります。
松山大学言語コミュニケーション研究科 金森強教授
神奈川大学 外国語学科 高橋一幸教授
また、高知工科大学の長崎先生には、事務局とし活躍いただくだけでなく、高知県でアクション・リサーチを5年間継続してこられた経験を生かして支援に関っていただきます。
私たちは、支援の内容とスケジュールの概略を次のように考えています。
1.中学・高校の英語科教員を対象にした英語授業改善のためのアクション・リサーチ
ねらい:自分の授業実践を振り返り問題点を発見し、生徒と協力しながら改善のための対策を積み上げることによって、生徒理解を深め、英語授業力を伸ばすばかりでなく、プロとしての教師の役割について認識を深める。1学期はリサーチの進め方を体験的に理解し、2学期に各自学校で実践、成果を12月か1月にまとめる。
1) 6-7月 アクション・リサーチの手法を学習し、ミニ・リサーチを実践し理解を確かめる。
2) 8月 期末試験の成績や授業を振り返り、授業の問題点を発見し、仮設を立てる。
3)9-10 月 仮説の実践。実践記録をポートフォリオに集め、振り返りをする。
4)11-12 月 実践の様子で仮説を変更する。期末テストの成績などの結果の検証。
5) 1 月 レポートにまとめる。発表と、研修全体の評価。次年度に向けて具体的な研修ス ケジュールを立案する。
2.英語活動に不慣れな小学校教員の指導力向上のためのアクション・リサーチ
ねらい:英語に不慣れな小学校教員が、自信をもって英語活動に取り組めるようにするために段階を踏んだアクション・リサーチによる指導力向上と授業改善。
1) 6-7月 英語活動の目標を理解する。英語活動の一コマ分(あるいはその一部)を観察したり、ビデオに録画することによって現状把握の基礎データーを得る。また、挨拶、チャント、歌に用いられている英語のリズムやイントネーションに注意し習得を計る。
2) 8月 挨拶や歌、チャントに加えて、単語やきまり文句の発音に注意する。また、ゲームを楽しく指導力も身につける。あらに、4月に集めた基礎データーや子どもの感想、授業ノートなどから、夏休み以降の授業改善の焦点を明らかにし、段階を踏んだ対策を計画する。
3) 9-12 月 以下、授業改善の対策をアクション・リサーチのプロセスにならって実施し、プロセスをポートフォリオに残すと同時に、研究会で報告し、相互に意見交換して改善を目指す。この間、一度は教室で研究授業をする。
4) 12-1月 研究成果の発表と研修全体の評価。
以上です。私たちからのメールは、1回につきA4 で2枚程度までとし、読む側の負担にならないように配慮します。この支援に関するメールは、全て、事務局の長崎先生から発信されます。質問などがある場合には、長崎先生にお寄せください。
それでは、私たちの意をご理解いただき、多くのかたがこの計画に参加くださいますようお願いいたします。
Subscribe to:
Posts (Atom)