Saturday, December 6, 2008

アクション・リサーチ交流会2008 in 松山



2008.11.30(土)、初めてのアクション・リサーチ交流会を開催しました。当日は、各地から、80名を超える熱心な先生方の参加があり、熱気ある交流会となりました。交流会のレポートは、後日掲載します。

Tuesday, November 4, 2008

私のアクションリサーチ File #2-2 山田 憲昭先生(高知西高校)



 前編において、私とアクション・リサーチ(以降AR)の出会いについて、個人的な思いを含めたレポートを書いた。この後編では、昨年度(2007年度)高知西高校で実施したAR事例を具体的に報告したい。
まず、私がAR対象として選んだのは、高知西高校普通科・2年生(39名)のクラスのライティング(2単位)の授業である。4月当初のスタディ・サポート及び6月の中間考査によると、そのクラスの英語力クラス平均値は同じ学年の中で最も低いという結果であった。また、家庭学習の時間が少なく、平日で10分程度であった。さらに、1年次からの成績不振者5~6名存在し、授業に対する好感度も低く、「英語嫌い」が目立っていた。一方、4~6月の授業観察では、教員の話を静かに聴き、ノートも一応取る、いわゆる「まじめに授業を受ける生徒集団」という一面もあった。

 このような背景を踏まえて、このクラスの生徒たちの英語力の向上のために、以下のようなリサーチ・クエスチョン及び仮説および実施計画を立て、7月以降には授業実践を開始した。

リサーチ・クエスチョン 英語に対する苦手意識が強いクラスで、生徒が自信を持って授業中の活動に参加し、「英語がわかる・できる・楽しい」という実感が持て、基礎的な英語力を定着させるには、どのような指導が効果的であろうか?

仮説1―授業開始後すぐに、簡単な英語ゲームを実施することで、英語学習の雰囲気を向上させることができるだろう。

仮説2―授業中に行う教科書中の課題Task1・2・3をハンドアウト化して、取り組みやすくすることで、生徒の授業中の活動が活性化するだろう。

仮説3―月1回テーマを設定しての英作文課題「月一課題」を発展・改良し、模試や入試など教科書以外のライティング課題を導入することで、基本的な英語力の大切さを理解させ、家庭学習を活性化させることができるだろう。

具体的実践を通じて、まずわかったことは、仮説1の英語ゲームが授業にメリハリを作り、多くの生徒に受け入れられる活動であるということであった。しかし同時に、授業が予定通りに進まないという弊害も生じた。そこで考えたのは、仮説2のハンドアウトを改良し、生徒の授業中の英文筆写時間を短縮することができる形式(穴埋め・並び替え)に変更するということであった。時間短縮の結果生じる「浮いた時間」が英語ゲームのための時間(約5~7分)ということである。英語ゲームの結果は、平常の成績に加味することとした。ゲーム内容は、教師が選んだ教科書の既習語1~2語を、1分程度の時間内に、簡単な英語を使ってペアの一方が説明し、もう一方はその説明を聞いて語を言い当てるというものであった。仮説3については、残念ながら時間の都合で十分に取り組めなかった。

 この間の生徒の変容には、指導者の私には大きく思えた。4月当初は、緊張感はあるものの、活動的・協力的でなく、英語学習に自信がない様子の生徒が目立っていた。しかし、9月~11月に仮説1・2による「英語ゲームの導入」と「ハンドアウトの改良」を実施することで、生徒間に次第に打ち解けた雰囲気が生まれた。調査はしていないが、ペアで英語ゲームを行うことがそういう雰囲気が促進した可能性もあると思われる。また、11月に実施したアンケート調査では「英語学習の楽しさ感・好感度」の上昇が見られ、12月に実施した後期中間考査では、6月に55.1点であったクラス平均点が59.9点にまで向上した。徐々に生徒に「授業を楽しむ姿勢」、「授業に参加する自信」のようなものが芽生えてきたように感じた。

 実は、4月当初、対象クラスが2年生7クラス中最も英語力が低いクラスだとわかり、私は少し不安を抱いていた。しかし、6月の中間考査後、アンケート調査を実施し、「英語授業に好意的」「成績を何とかしたい」と考えている生徒が3分の1程度存在しているという事実を知り、「この3分の1の生徒の力を借りて、授業を改善し、彼らの英語力をプラス方向へ向かわせることができるのではないか」と徐々に思うようになった。不安を押し殺しながら実践を継続し、ARを開始して1ヶ月を過ぎた10月頃から生徒が積極的に授業に参加し始めていることに気付いた。生徒の変容が目に見えてわかるようになり、嬉しく感じる自分がいた。教員としての喜びが、生徒の成長とともにあることを改めて認識した。

さて、最後に、今回のARで実施した種々のアンケート調査で見られた生徒の学習動機と学力向上に関わる重要な知見を報告したい。

アンケート調査によると、仮説1・2を実施することで、授業を「好きである」「まあまあ好きである」と回答した生徒が37.1%(7月)から65.8%(11月)にまで向上した。肯定的に回答した生徒の多くは、その理由として「わかりやすい」「楽しい」「おもしろい」「雰囲気がいい」「勉強になる」「ミステリー・ワードが好き」等を挙げた。さらに、11月時点で81.5%の生徒が、英語ゲームは英語力向上に「かなり役立つと思う」「まあまあ役立つと思う」と回答した。生徒たちは、その理由として「説明の仕方を学べる」「表現力が向上する」「単語を覚えられる」等、自分自身が役立ったと実感できた様々な理由を記述式で回答したが、それらは私の想定をはるかに超える内容であった。

これらから言えるのは、単にfun activityとしてゲーム活動を授業に取り入れた経緯はあったけれども、実は
それらのゲーム活動が「英語力の向上を生徒が実感できるような活動」であったことが生徒の学習動機を高めた可能性が大きい、ということである。授業と何の脈絡も発展性も、継続性もないゲーム活動であったならば、果たして生徒のやる気はこのように変容したであろうか。残念ながら、今回のARではこの1種類のゲーム活動しか行わなかったので、この疑問に正確に答えるデータはない。しかし、英語学習の雰囲気を変えることができればそれでいいと考えていた私には、生徒が予想外以上に良い方向に反応したことは本当に大きな発見・知見であった。

英語指導の現場では、ALTとのT・T授業等を中心に、ゲーム活動を頻繁に授業に取り入れているケースが見られるが、そういう先生方には是非「授業の雰囲気作り」や「生徒の注目を即効的に集める」という効果からもう一歩踏み込んで「生徒に英語力が向上しているという実感を与える」という効果を考えたゲーム活動作りにチャレンジされてはどうかと思う。

☆報告書へのリンク (現在準備中)

☆連絡先 (現所属)高知県教育委員会事務局高等学校課
     TEL:088-821-4850
     E-mail:noriaki_yamada@kt5.kochinet.ed.jp

Tuesday, October 14, 2008

ご案内 「アクション・リサーチ交流会2008」 in 松山



アクション・リサーチを実践している仲間が集って、交流を深めます。アクション・リサ-チの意義や醍醐味ばかりでなく、苦労話なども、楽しく語り合いましょう。授業に悩みを抱えている先生、プロとしての力量を磨きたいと思っている先生、多くの人と授業実践を交流したいと思っている先生。気の合った仲間と一緒に参加してみませんか。それでは、松山でお会いしましょう。



日 時: 2008年11月29日(土)13:00~17:00

会 場: 松山大学学生会館カルフール会議室1.2
       JR松山駅から、路面電車循環線で約15分。清水町下車。
       徒歩2分。大学西門から入りすぐ右手。

主 催: アクション・リサーチ・ゼミ@松山大学(ARS@MU)
共 催: アクション・リサーチの会@yokohama(ARCY)アクション・リサーチ支援ネットワーク

内 容:                       

13:00 開 会        愛媛県教育委員会 鈴鹿基廣
13:05 歓迎のことば    松山大学 金森 強

13:15-13:45 基調講演「なぜアクション・リサーチなのか」
                 松山大学 佐野正之

13:45-14:00 発表者紹介(自己紹介と発表内容の概要)

14:00-14:30 AR実践研究発表1 (進行:教室A=高橋 教室B=長崎)

 教室A 「単語集を利用した意図的語彙学習に関するアクション・リサーチ」
                神奈川県立大和西高等学校  小金丸 倫
 教室B 「語彙指導に重点を置いたリーディング能力を伸ばすアクションリサーチ」
                神奈川県立川和高等学校 栗原 清

14:30-15:00 AR実践研究発表2

 教室A 「テレビ会議を通してスピーキングの力を伸ばすアクション・リサーチ」
                藤沢市教育委員会 東 麻子
 教室B 「パラグラフ・ライティングの力を伸ばすためのアクション・リサーチ」
                神奈川県立大和西高等学校 村越 亮治

  (休憩)

15:10-15:40  AR実践研究発表3

 教室A 「基礎・基本の定着で英語を学ぶ楽しさを実感させるAR」
               西条市立西条南中学校 武田志津
 教室B 「教科書の指導とからめたタスク活動によって英語の苦手意識の克服を目指すAR」
               愛媛県立松山工業高校 宮内朋子

15:40-16:05 報 告「アクション・リサーチは英語教員のどこに効いたか」
                高知工科大学 長崎政浩

16:05-16:30 講 演「これからの教師教育と教員研修」
                神奈川大学  高橋一幸

16:30-16:55 ミニ・シンポジウム「参加者の交流とリフレクション」(進行:金森)

    気取らない座談会形式で、佐野先生のコメントを交えながら、発表者の皆さんと
    今日1日の交流会を振り返ります。

16:55    閉 会       愛媛県教育委員会 池田哲也

  ☆懇親会  17:30~ ホテル・サンルート松山(JR松山駅から徒歩2分)
会費 5,000円

参加申込: 申込みの必要はありません。ARに興味のある方はどなたでも歓迎です。参加費は無料です。


☆開催案内ダウンロードはこちらから(pdf)。

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「英語教員のためのアクション・リサーチ支援ネットワーク 」
【主宰】佐野正之(松山大学)

☆お問い合わせ【事務局】長崎政浩(高知工科大学)
masahiro@nagasaki21.com または 0887-57-2105まで

Sunday, September 21, 2008

第4回「授業改善への具体的指針」 高橋一幸(神奈川大学)

 授業改善には、いろいろな方法があるが、教師一人が独力でできることは限られている。より良い授業を目指して、ともに励まし合い切磋琢磨する仲間を見つけることが大切である。「学ぶことは真似ることから始まる」とよく言われる。優れた授業を数多く見て学ぶことは、特に経験の少ない若い先生方には重要である。また、勇気を出して、自分の授業や実践を公開し、他の人々から批評や助言を得ることも大切だ。自己の経験からだけでは視野が広がらないので、英語教育に関する様々な文献を読み、自分なりに消化して授業に取り入れることも忘れてはならない。

 ただ、ここで留意すべきことは、いかに本を読んだり、すぐれた授業実践を見たからと言って、そこに示されているものを自分自身の考えもなく、ただ真似るだけではうまく行く保証はない。対象とする生徒が異なり、指導する教師自身も違うのであるから、うまく行かなくてむしろ当然だと言えよう。「自分の育てたい理想の生徒のイメージ像」と「生徒達の現状(現在地点)」とのギャップの中から、授業改善の目標を一人ひとりの教師が自ら見つけ出し、それを克服するための具体的方法(仮説)を考えて、それを実践しながら、その効果を検証し、もし、うまく行かなかったら、仮説を修正して粘り強く取り組むことが必要である。このような手順をきちんと踏んで授業改善を進める方法が「アクション・リサーチ」である。リサーチと言っても、実験群と統制群に分けて、異なる指導法を実施し、その結果を有意差で数量的に検証するような、現場教員には技術的にも難しく、指導モラル上も実施困難なものでなく、目標意識を持って授業を行いながら、ピンポイントで具体的にその改善を図る、現場教師にすすめたい方法である。

Wednesday, September 3, 2008

第3回 「中・高英語授業セルフ・チェック」髙橋 一幸(神奈川大学)

あなたの授業にこのような傾向は見られないだろうか? 自己点検から始めよう。自分の授業にいくらかでも次の授業のような傾向が見られる場合、また、幸いに自分の授業にはまったく当てはまらない場合でも、以下の授業は何が問題なのか、まずは読者ご自身で考えてみていただきたい。(筆者自身の分析は、本稿末に掲載しておくので、後ほどご確認いただきたい。)

[最近よく観る中学校の授業] 
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教師の与えるゲーム的な言語活動に、生徒たちは楽しそうに元気に参加している。教室は一見活気に満ちている。しかし、生徒に近づき、その発話に耳を傾けてみると、英語のリズムや発音になっていない。英語自体にも誤りが多く、通じない文も多々見られる。

[昔ながらの高等学校の授業]
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教科書の内容理解(表面的な訳読)と教師の文法説明主体の旧態依然とした授業である。ごく少数の指名された生徒は立ってテキストを音読するが、発音も平板なカタカナ読みで、意味の区切りも意識できていないようである。


 いかがであろうか? ここで少し立ち止まって、考えてみよう。
英語教師として、
・「私の理想とする英語授業とは?」
・「私の考える英語学力とは?」
・「生徒たちに育成したい態度とは?」

<中・高英語授業セルフ・チェック―筆者の分析>

[最近よく観る中学校の授業]
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 活動に参加したことのrewardがなく、生徒に何ら変容が見られない。時間数不足もあろうが、生徒たちの興味を引く派手立つ活動に教師が目を奪われ、表現能力の基礎を作るドリルや音読・暗唱などの地道な練習活動(言語活動へのレディネス作り)が指導過程に欠落している。授業は遊びではない。楽しいだけでは授業にあらず。また、内容的もやりがいがあり、力がついているということを実感できる活動でないと、表面的楽しさだけでは生徒の興味・関心も長くは維持できないだろう。
[昔ながらの高等学校の授業]
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 授業に具体的到達目標が見えない。生徒は怪しげな日本語訳はしているが本当に内容を理解しているかも極めて疑わしい。教師の延々たる説明に興味を示して耳を傾け理解できている生徒は少なそうだが、仮に理解できたとしても実践的な表現力や運用力には結びつくはずもない。生徒の表現能力や運用能力は、「表現する場、運用する場自体がまったく与えられていない」ので不明だが、授業でまったく育っていないことは断言できる。生徒は教わっていないこと、訓練していないことはできないものだから。生徒の学力は授業を映す鏡である。

Tuesday, July 8, 2008

第2回 「授業とは、生徒の中に「質的変容」を引き起こすこと」 髙橋 一幸(神奈川大学)

教師の指導と生徒の学習や活動を通して、生徒の中に「質的変容」を引き起こしえたか否か。これが筆者の考える授業成立の要件である。質的変容には、これまで言えなかったことが的確に表現できるようになったなどの「技能」(skill) の変容や、言語や題材内容などについて知らなかったことを知ったという「知識」(knowledge) の変容がある。さらに、技能や知識の変容を通して生じる究極の変容は、生徒たちの日常のものの考え方や感じ方、人との接し方、行動様式などに変化を及ぼす「態度」(attitude) の変容である。ここまで来れば、それはまさに英語「教育」と呼ぶに値しよう。

長期的・短期的視点から、授業を通してどのような変容を生徒に引き起こしたいのか? 看板倒れではなく目標を実現するためには、抽象的な目標を教師・生徒の双方にとって評価可能な具体的活動として設定すること。これが、授業を設計する基盤となる。

指導の鉄則は、レディネスを作ること。

実際の指導では、単位授業にせよ、単元や年間指導計画にせよ、個々の指導過程や活動、1回1回の授業を相互に関連付け、具体的目標(goal)に向かってスモール・ステップを踏んで、無理なく、すべての生徒たちを導く道筋(route)を考えなくてはならない。例えば、1, 2, 3, 4の順序は2, 4, 1, 3ではダメで、1, 2, 3, 4であって初めて効果が上がるのである。指導過程(procedure)や指導計画(syllabus)に、このような説明可能で必然性ある順序が構築されているかどうかを十分に吟味することが授業を設計する上で不可欠なこと、「点として存在する活動や授業を線で結ぶ」ことが肝要である。

Tuesday, July 1, 2008

第1回「理想と現実と諦め」  髙橋 一幸(神奈川大学) 



 生徒たちが目を輝かせ、大きな声で英語を発声し、生き生きと伝達表現活動や自己表現活動に参加する。そのような授業を実現したい。教師であればだれもが願うことである。しかし、その意に反して指導がカラ回りして教師のひとり芝居となって、シラけた沈黙が広がり、まったく無関係な雑談や喧騒のうちに授業終了のチャイムを聞く、といったこともある。そして、心ある教師は自信を失ったり、自己嫌悪に陥ったりするのだが、これは教師として正常な証拠。こういうときに、「こんなできの悪い生徒を教えられるか!」と、授業が成立しない責任のすべてを生徒に転嫁したり、日々くり返される現実への諦めから、問題意識すら麻痺し何の改善意欲も生じなくなれば、教師生命は終わりである。

授業は生徒と教師の双方の努力によって創りあげるもの。生徒が担うべき責任も多いことは事実だが、一人ひとりの生徒が自ら学ぼうとする意欲や態度を育てることが教師本来の仕事であることを考えるなら、プロとしてより大きな責を負うべきことは当然である。「生徒には教師を選ぶ権利はない」のだから。自分の授業を内省(reflect)し、日々その改善を図ることが教師に求められる所以である。「“英語が使える日本人”育成のための戦略構想・行動計画」のもとに5カ年計画で実施された全英語教員対象の「悉皆研修」、また、進行中の「教育改革」の中では不適格教員に対する再研修や現場からの配置換え、教員免許の10年毎の更新制などが現在検討されているが、児童・生徒のためにより良い授業を求めて自分の授業を工夫・改善することは、専門職として教師自らが何を置いてでも率先して、まず取り組むべき課題である。